Research
研究内容紹介

Project 02

グリア細胞の異常と疾患に関する研究

神経障害性疼痛

病態時のグリア細胞は、過度で無秩序なシナプス新生・除去を行うことで本来繋がっていない神経ネットワーク同士を結びつけてしまいます。これにより、アロディニア(触覚が疼痛となって伝わってしまう、図)や、てんかん原生(てんかん発作が起こりやすい脳内状況)が引き起こされます。アストロサイト及びミクログリアによるシナプス再編、ネットワーク再編メカニズムの解明、さらにこれらグリア細胞の制御によりネットワークを再々編する治療戦略の開発を目指しています。

 

 

代表論文
Takeda et al, Nat Commun, 13, 4100.(2022).doi:10.1038/s41467-022-31773-8
Morizawa et al, Nat Commun, 8, 28 (2017). doi: 10.1038/s41467-017-00037-1
Kim et al, J Clin Invest, 126, 1983-1997 (2016). doi: 10.1172/JCI82859
Koizumi et al, Nature, 446, 1091-1095 (2007). doi: 10.1038/nature05704

 

緑内障

緑内障は日本で第一位の中途失明原因疾患です。最大の危険因子は「高眼圧」と考えられており、眼圧を下げる事が治療の第一選択となっています。眼圧を下げる薬には様々な種類がありますが、十分に眼圧が下がらない場合や副作用など、様々な問題があります。また、眼圧を十分に下げても病気が進行する例があることや、日本人の緑内障患者の多くは眼圧が正常なレベルであることなど、眼圧だけがこの病気の原因ではない事が伺えます。我々は、(1)新たな眼圧下降作用をもつ治療薬候補の探索と(2)眼圧以外の新たな緑内障発症メカニズムの解明と新規治療薬候補の探索の2点を中心に研究を進めています。

 

 

代表論文
Shinozaki et al, Sci Adv, 8(44):eabq1081. (2022). doi:10.1126/sciadv.abq1081.
Hamada, Shinozaki et al, Br J Pharmacol, 178, 4552-4571 (2021). doi: 10.1111/bph.15637
Takeda, Shinozaki et al, GLIA, 66, 2366-2384 (2018). doi: 10.1002/glia.23475
Shinozaki et al, JCI Insight, 2, e93456 (2017). doi: 10.1172/jci.insight.93456

 

脳虚血耐性

脳卒中は、本邦の死亡原因第4位の重篤な疾患であり、一命を取りとめた後も大きな後遺症に悩まされる場合が多いことから、医学的にも社会的にも重要な疾患であると言える。脳は最も虚血に対して脆弱な臓器であるが、先行して非侵襲的虚血(プレコンディショニング、PC)負荷を経験すると、その後の侵襲的虚血に対する抵抗性が獲得できる。これを虚血耐性と呼ぶ。虚血耐性のメカニズム解明は、脳卒中の予防、治療に大きく貢献することから、長年多くの研究がなされているが、それらのほとんどは神経細胞に注目した研究である。私達は、虚血耐性が誘導される際に、グリア細胞が中心的な役割を果たしていることを見いだしました。現在、その分子メカニズムの解明、さらに治療戦略の開発を目指しています。

 

図 グリアコミュニケーションによる虚血耐性獲得メカニズム

 

  1. 侵襲的脳虚血により神経細胞は重度の傷害または死に至る。
  2. 非侵襲的虚血(PC)を経験すると、侵襲的虚血に対して抗性を獲得する虚血耐性が誘導される。
  3. PCのような軽度の刺激は、先ずミクログリアが感知する。ミクログリアは活性型に変化し、直接虚血耐性誘導に関与する一方、アストロサイトの活性化(反応性アストロサイト)を誘導する。反応性アストロサイトはP2X7受容体を発現させ、本受容体依存的にHIF1α発現を誘導し、種々の神経保護分子を産生し、持続的かつ強力な虚血耐性を引き起こす。

 

代表論文
Hirayama et al, (2021) GLIA, 69, 2100-2110. doi: 10.1002/glia.23998
Hirayama and *Koizumi (2017) GLIA, 65, 523-530. doi: 10.1002/glia.23109
Hirayama et al (2015) J Neurosci, 35, 3794-3805.

 

その他、(i)てんかん、(ii)アレキサンダー病、(iii)うつ病、(iv)生後発達早期の環境と精神疾患等、各疾患の専門家とタッグを組み、真の疾患分子病態に迫る研究を行っています。

代表論文
(i)てんかん
Sano et al, JCI Insight, 6(9):e135391. (2021).doi: 10.1172/jci.insight.135391.
 
(ii)アレキサンダー病
Saito et al, Brain,147(2), 698-716/./(2024).doi:10.1093/brain/awad358.
Saito et al, Glia, 66, 1053-1067. (2018). doi: 10.1002/glia.23300
 
(iii)うつ病
Kinoshita et al, EBioMedicine, 32, 72-83.(2018). doi:10.1016/j.ebiom.2018.05.036.

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